お子さんの学力が下がってきた、思うように伸びない——そう感じたとき、多くの保護者の方は「何か新しいこと」を探し始めます。
新しい塾、新しい教材、新しい学習アプリ、新しい勉強法。
時代に合った最新のものを取り入れれば、状況が変わるのではないかと考える。この気持ちは、私にもよくわかります。
しかし、私の経験から申し上げると、成績が下がったときに本当に見直すべきものは、「新しく足すもの」ではなく、「いつの間にか無くしてしまったもの」であることの方が多いのです。
たとえば、音読という習慣。小学校の低学年の頃には毎日していた音読を、いつからかしなくなっていないでしょうか。
国語の教科書を声に出して読む、英語の教科書を音読する。この地味な作業には、黙読では得られない効果があります。声に出すことで、意味の切れ目や語のかたまりを身体で覚え、読解のリズムが整っていきます。
漢字や英単語の書き取りも同様です。パソコンやタブレットで学習する機会が増えた分、手で書いて覚える時間は確実に減っています。しかし、手で書くという行為には、視覚と運動感覚を結びつけて記憶に定着させる働きがあり、これは画面上のタッチや入力では代替できません。
そして反復。同じ問題を何度も繰り返し解く、覚えるまで単語カードをめくり続ける、公式を口で言えるまで唱える。地味で退屈な作業ですが、学習の中で「定着」と呼ばれる部分は、結局のところ反復によってしか作れません。
こうした古典的な学習法は、新しい方法論の影に隠れて、いつの間にか家庭の学習からも学校の指導からも姿を消しつつあります。「もっと効率的なやり方があるはずだ」「今どきそんな古臭いやり方は」という空気の中で、静かに端に追いやられていく。しかし、それらが持っていた効果そのものが消えたわけではありません。
「できるまで頑張る」という姿勢についても、同じことが言えると思います。今の時代、「頑張れ」という言葉はずいぶん使いにくくなりました。無理をさせない、休ませる、選択肢を与える、といったことが重視される風潮の中で、「できるまで諦めずにやる」という価値観は、少し古めかしく響くようになっています。
もちろん、追い詰めるような使い方は避けるべきです。しかし、「できるまでやる」という経験を子どもの頃に一度も持たないまま大きくなることは、それはそれで大きな損失です。
難しい問題に向き合い、途中で投げ出したくなる感情を乗り越えて、最後にできるようになる。この経験があるかないかで、その後の学習への向き合い方は大きく変わってきます。
「これは指導要領には入っていないから」「今の教育の主流ではないから」という理由で、こうした基本を避ける必要はありません。
ご家庭の方針として、時代の風潮に少し逆らってでも伝えるべきことは伝えていく。それが、長い目で見てお子さんの学力を支える基盤になっていきます。
学力が下がったとき、まず新しいものを探すのではなく、いつの間にか手放していたものを一つ取り戻す。その方が、案外近道になることが多いように思います。
那須塩原市西那須野にある高校受験・大学受験塾 本松学習塾

