受験はロケット打ち上げ。

親の役割は発射台まで

· 塾長の指導観・雑感

那須塩原市西那須野の高校受験・大学受験塾 本松学習塾塾長のブログ

教育のゴールは「自立」です。

 

しかし受験期になると、多くの親御さんが「まだ自分が舵を取らねば」と考え、かえって子どもの成長を妨げてしまう姿を目にします。

 

ここで「宇宙開発」を例に考えてみましょう。

 

幼児期は、紙飛行機や風船ロケットで遊ぶ段階です。

 

親が隣で一緒に笑い、挑戦する楽しさを共有するだけで十分。この時期は「安全な空間」と「安心感」を保証することが役割です。

 

小学生から中学生になると、模型ロケットやドローンの打ち上げへと進みます。ここでは失敗も学びの一部。

 

子どもが自分の手でスイッチを押し、墜落の責任を引き受ける。親は遠くから声援を送り、必要以上に操縦桿に手を出さないことが大切です。

 

そして高校受験や大学受験、特に最難関高・最難関大学を目指す段階は――まさに「有人ロケットの打ち上げ」です。アポロ計画でも、日本の「はやぶさ」でも、地上の素人が直接手を出す余地はありませんでした。

 

何千人もの技術者が燃料配合から軌道計算までを担い、宇宙飛行士はその専門知識を信じて飛び立ったのです。もし地上の誰かが不用意にボタンを押せば、結果は失敗に終わります。

 

受験も同じです。難関校への挑戦では、専門家=指導者の存在が不可欠です。保護者が「もっと勉強しなさい」「スマホをやめなさい」と繰り返すことは、ロケットに向けて地上から雑音を飛ばすのと同じ。通信妨害になり、本人の集中を乱します。

 

では保護者の方が無力なのかといえば、決してそうではありません。

 

むしろその役割は「発射台の整備」に集約されます。

 

家庭を安心できる場所に保ち、規則正しい生活を支え、健康を守る。

 

例えば、夜遅くまで照明がついていれば睡眠不足につながりますし、食事が偏れば燃料切れのロケットと同じです。

 

生活リズムを守り、安定した環境を与えることこそ、最高の支援です。

 

SpaceXは、打ち上げ環境を徹底的に整えることを重視しています。

 

強風が吹けば延期し、燃料温度が理想に達しなければ打ち上げを止める。地上が整っていなければ宇宙へは飛べないのです。

 

教育でも同じで、保護者ができる最大の貢献は「子どもが打ち上げに集中できる環境」を保証することです。

 

そのうえで、一度飛び立ったら親は口を出さず、信じて見守る。

 

はやぶさ探査機は数億キロ離れた小惑星まで飛び、地球から届くのはごく限られた指令だけでした。

 

子どもが受験という宇宙に挑むときも、最後に必要なのは「信じて託す」勇気なのです。

 

結局のところ、教育の完成は「親が最後に一歩引く」ことで訪れます。

 

発射台をしっかり整え、専門家に託し、飛び立つ姿を見守る。その潔さがあってこそ、子どもは自らの宇宙を切り拓くことができるのです。